nagajisの日不定記。
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とうとう、僕は登り始めた。背中へ重たいやつを引っ掛けて。一進一退を繰り返して。泣きそうな顔をして。口の中で、呪文みたいに意味のないことをブツブツやって。−−−こんな、壁を登るのが必要が。それは分らない。これを上り切れば、僕に何か増しになる要素があるか、それも知らない。だけどこの旅行を始めたのは、ここまでやって来たのは、今こうしてここで目玉を凝らしてルートを探しているのは、それはみんな僕であって僕一人だ。だから、見え見え(傍点)じゃないか。大事なのは必要性などという右顧も左眄も可能な便利な概念じゃない。たった一つの、上へつながるちっぽけな足場だ。それだけだ。分ったか!
(綿貫益弘「津軽から江差へ」。60°/15mの磯崖を自転車を担いで登りながら)